水星磁気圏探査機みお

[ISAS news] 「みお」搭載水星ダストモニターMDM (小林)

2019年11月29日

「みお」には、水星ダストモニター MDM(Mercury Dust Monitor、有効検出面積 64cm2、重量約900g)が搭載されている。MDMは、「みお」が水星到着後高度400×12,000kmの軌道にて観測を行う間、水星及びその周辺におけるダスト環境の観測を行う予定である。内太陽系でのダスト観測は、1970年代に打ち上げられたHelios探査機に搭載されたダスト観測装置によるもののみで、MDMはそれ以降で初めての内太陽系のダスト観測、そして初めての水星周回軌道上でのダスト観測を行う予定である。

水星周回軌道上で観測されるダストの種別としては、惑星間ダスト、β-メテオロイド、星間ダスト等の水星以外から到来するものと、隕石などが水星表面に衝突した際に巻き上げられる衝突噴出ダストなど水星に起因するものがあると予想される。MDMは、ダスト粒子の運動量と到来方向を決定し、その起源を推測する。

一般にダスト粒子は、月や水星のような大気が無い天体の宇宙風化に重要な役割を果たしている。ダスト粒子の水星表面への高速衝突は、そのレゴリス層の生成に寄与する。宇宙風化は水星表面の光学特性に影響を及ぼす。水星周辺のダストフラックスを調べることで、水星表面の年代推定に対して制限を与えられる可能性がある。

一方で、ダスト粒子の水星表面への衝突は水星の希薄大気形成に関係しているかもしれないと考えられている。水星はNaとKからなる薄い大気を持っていることが地上での分光観測から知られているが、表面物質からの放出プロセスは未だ不明である。同じく「みお」の搭載観測装置である水星ナトリウム大気スペクトルイメージャ(MSASI)は、Na D2放出(589nm)近くのスペクトル領域で働く高分散可視分光計であり、MDMとの共同観測でNa大気の新しい情報が得られる可能性がある。

ダスト粒子よりもサイズが大きなメテオロイドが水星表面に衝突することで、衝突噴出ダストが常に水星周回軌道上に巻き上がっていることも考えられる。特に、エンケ彗星の軌道(ダストトレイル)と水星が交差する際には、衝突噴出ダストも増えると考えられる。また、衝突噴出ダストによって水星表面の物質が流出しているのが観測できるかもしれない。

MDMは、「みお」のサイドパネルに取り付けられているセンサユニット(MDM-S、写真1)と、MMO内部に配置しているエレクトロニクスユニット(MDM-E)で構成されている(写真2)。MDMのセンサには圧電セラミックスPZTを採用した。PZTは、キュリー点は約320度付近にあり、水星軌道上で達する上限温度170deg Cぐらいまでなら、脱分極することなく安定して使用できるというメリットからである。MDMセンサは、入射ダスト粒子の衝突によって生じる応力の大きさに応じて電荷信号を生成する。衝突するダスト粒子の運動量は電荷信号から求めることでき、衝突方向は信号検出のタイミングの「みお」のスピンの方位角から推定することができる。

BepiColombo打上げ後、2018年11月24日に行われた初期運用で、MDMは電流・電圧、温度などのデータは問題無し、観測データをダウンロードするためのサイエンスパケットにも異常が無いことが確認できた。機上でチェックの為に発生させたテストパルスにも正常な反応を示した。まだまだ水星までは長い道のりだが、観測データ取得後のデータ解析の準備をしながら観測開始を待ちたいと思う。

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写真1 「みお」のサイドパネルに取り付けられているMDMのセンサー。

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写真2 MDMのセンサー(右側の白色)とエレクトロニクス(左側の黒色)。

この記事は、ISASニュース 2019年11月号 (No. 464)に掲載されています。

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