水星磁気圏探査機みお

[ISAS news] BepiColombo探査機が最初のイオンエンジン連続運転開始 (小川)

2019年01月24日

2018年12月17日、BepiColombo探査機は Near Earth Commissioning Phase(NECP:近地球初期チェックアウトフェーズ)を無事終え、予定通りイオンエンジンの連続運転に入りました。水星到着まで22回予定している連続運転の最初の1回目で、連続運転はおおよそ2カ月間を予定しています。今回運転するのは4機あるイオンエンジンのうちの2機で、1機当たり125 mN、2機で250 mNの推力でおおよそ4トンの探査機を減速します(太陽に落ちていく方向なので加速ではなく減速になります)。これはありんこ250匹が4トンのBepiColomboを押すことに相当します。イオンエンジン運転のためBepiColombo探査機を所定の姿勢に変更し、MTMの太陽電池パドルを太陽に対して正対させました。イオンエンジン運転中はイオンエンジンのステアリングにより探査機の姿勢がコントロールされます。

イオンエンジン連続運転中は探査機とのコンタクトが激減する運用計画です。そのため探査機システムは高い自律機能と冗長性を有しています。自動で異常を検知して不具合を隔離し他に利用可能なもので回復する、いわゆるFDIR(Fault Detection, Isolation and Recovery)が実装されています。NECPでは各機器のチェック、特に電気推進のチェックが入念におこなわれましたが、その中でFDIRの調整もなされFDIRがきちんと動作することが確認されました。イオンエンジン連続運転中は、「みお」本体は電源オフで、「みお」のヒーターラインのみにMPO経由でMTMの電力が供給されます(Dormant Mode)。本体が電源オフでも、ヒーターラインに電力が供給される限り、「みお」のヒーターは機械式サーモスタットによって受動的に制御されます。また「みお」のヒーターラインは主系と従系の2系統あって、主系のヒーターや機械式サーモスタットが故障した時には、従系のそれに自動的に替わる仕組みになっています。Dormant Modeでの動作は想定通りで、長期間「みお」の状態がみられないとしても十分安全な状態を保つことができることを確認しています。今回のイオンエンジンの連続運転が終わると、2020年4月の地球スイングバイの軌道に乗ることになります。

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BepiColombo探査機のイオンエンジン連続運転開始。想像図(ESA提供)

この記事は、ISASニュース 2019年1月号 (No. 454)に掲載されています。

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