水星磁気圏探査機みお

[ISAS news] 緊張の7分間 「みお」伸展物ラッチ解除運用 (関)

2019年09月30日

ISAS事情欄の常連となっている「みお」チェックアウト報告ですが、今回は8月6日-7日に実施したラッチ解除運用についてお伝えします。

「みお」は宇宙空間の電場・電波計測用のワイヤアンテナ4本(各15m)と磁場計測用マスト2本(各5m)を搭載しています。打上げ時はそれぞれ収納されており、水星軌道上でMPOから分離したあとに順次伸展します。このような機械的に稼働する部分は、多くの場合、打上げ時の振動や衝撃で誤動作しないように何かしらの方法で固定しておき、探査機がロケットから分離されたあと、早い段階で固定を外す、という運用をします。「みお」観測装置では、マスト2本とワイヤアンテナ1組2本がそれぞれラッチ(留め金)で固定されています。これらは昨年11月の初期チェックアウト期間中に外す計画でしたが、温度条件が整わないなどの諸事情で延期していました。

この間、関係者で様々な検討を重ねました。延期による直接のリスクはないはずですが、今回正常にラッチ解除できなければ観測に大きな影響を及ぼす可能性があります。故障ケースを洗い直し、許容できるものとできないものを再度識別し、手順を見直しました。解除動作に伴う電気的な特性の変化を観測できるように、プラズマ波動観測器と磁場観測器のデータも同時に取得することにしました。

8月6日、まずはマストから1本ずつラッチ解除を行いました。事前のテレメトリ確認はOK、実行条件は整っています。解除のコマンドシーケンスを送信してから結果がテレメトリで確認できるまで7-8分(電波伝搬時間、テレメトリの収集レート、地上システム内にデータが溜まるまでの時間等の合計)かかります。緊張の7分間が経過したころ、テレメトリステータスがラッチ開放を示す値に変化し、安堵の声が上がりました。もう1本のマストも正常に解除でき、完了後のテレメトリもOKでした。翌日7日は、ワイヤアンテナ2本のラッチ解除です。こちらは、解除に至る条件がマストよりも厳しいことが事前解析でわかっており、祈るような気持ちでコマンドを送信しました。7分を過ぎると焦りの空気が漂いましたが、直後、ステータスが【OPEN】に変化!歓声が上がりました。関係者一同、8ヶ月の苦労や心配が吹き飛んだ瞬間でした。この日の祝杯のビールが最高に美味しかったのは、言うまでもありません。

伸展物にとってラッチ解除は成功への第一歩です。本番は6年半後、水星についてからの伸展運用が待ち構えています。

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ラッチ解除成功を記念して欧州宇宙運用センター(ESOC)で撮影した集合写真。後方の大型ディスプレイには、相模原の運用室で立ち会ったメンバーが映っている

この記事は、ISASニュース 2019年9月号 (No. 462)に掲載されています。

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