水星磁気圏探査機みお

[ISAS news] 「みお」のプロジェクトマネージャ交替 (小川)

2020年06月01日

2020年3月31日付けで早川基BepiColombo「みお」プロジェクトマネージャが宇宙科学研究所を定年退職され、4月1日から私がプロジェクトマネージャに就任しました。水星探査ワーキンググループから数えると、向井 利典先生、山川 宏先生、早川 基先生に次いで4人目となります。早川 基先生は2006年から13年余りプロジェクトマネージャを務められました。

私は1998年に宇宙科学研究所に入所して以来、水星探査計画に参加してきました。宇宙科学研究所の「水星探査ワーキンググループ」結成が1997年ですから、ほぼ最初から携わっていることになります。主として熱制御系開発を担当してきました。「みお」以外にもM5ロケットの飛行安全や再使用ロケット、他の衛星の熱制御系の仕事もあって、「みお」の開発のすべてに関われなかったことは少し心残りです。しかし、これからは「みお」が水星を観測し素晴らしい成果を収めて寿命を全うするように精一杯のことをしてあげたいと思っています。

私は20年以上関わっていることになりますが、ヨーロッパの科学コミュニティは1983年に水星探査計画提案をしていたとのことですので、ヨーロッパの歴史はさらに15年以上古いことになります。本当に長いミッションです。長いミッションになると定年や異動・転職などで人の入替がどうしてもあります。「みお」を一緒に開発してくれたメーカーの担当者も何回か替わりましたし、ヨーロッパ側のプロジェクトマネージャや「みお」の担当者も替わりました。人が替わる毎に不安になりましたが、新しい担当者の頑張りと周りの方のサポートで大きな問題なくこれまでやってこられました。私も頑張りたいと思います。

この「みおつくし」の第10回で早川 基先生が日欧の違いについて紹介されていますが、私も紹介します。それは基準です。BepiColomboは惑星探査ミッションということもあって計画当初から質量が厳しく、グラム単位の質量管理がなされました。ヨーロッパでは開発の進め方がECSSという基準に定められています。マージンフィロソフィー(余裕の考え方)もそこに定められていて、機器毎の設計の完成度に依存するマージンやシステムレベルのマージンをそれぞれ定義し、開発の進捗に合わせてそれらを管理するやり方を取っています。一方で、日本側は機器担当者が開発実績や開発経験に基づいて余裕も込みで質量を算出し、システムレベルではそれらを集計し、ターゲット質量に対して管理していくというやり方でした。双方がやり方を理解できず苦労しました。最も困惑したのが「Phase Bまでは機器のマージンの他に、システムマージンを20%とることになっている」と言われた時で、日本側がそれまで算出してきた質量には考慮されておらず、観測機器をすべて降ろしても実現できない要求で、途方に暮れた記憶があります。結局、お互いが譲歩した形で開発がすすめられましたが、「みお」はBepiColombo全体システムから割り当てられた質量に対して長い間マイナスマージンで、質量軽減が最重要課題の1つでした。

このようにヨーロッパには衛星開発の基準(ECSS)がありますが、当初はそれを日本側の開発にも適用するように求められました。日本の製造メーカが対応困難であるなど現実的ではなかったので、日本のやり方を受け入れてくれるよう交渉しました。結局「みお」は日本の基準で開発するが、ヨーロッパ側とのインターフェース部分はECSSに則ることで決着しました。それでも、その後ヨーロッパ側に日本の基準の説明をかなりしなければなりませんでした。

さてBepiColomboの地球スイングバイは無事終了しました。水星到着まで5年余り。「みお」の航海の無事を祈りつつ、皆様これからよろしくお願い致します。

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2006年10月BepiColomboプロジェクトチームとして最初の欧州宇宙運用センター(ESA/ESOC)訪問。写真中央の女性はElsa Montagnon氏(現BepiColombo Spacecraft Operation Manager)。当時から担当が替わらないのはとても心強く安心感があります。

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2006年10月にESA/ESOCを訪問した日本チーム。左から戸田 知朗先生、筆者、笠羽 康正先生、山川 宏先生(前々プロジェクトマネージャ)、早川 基先生(前プロジェクトマネージャ)、山田 隆弘先生。

この記事は、ISASニュース 2020年4月号 (No. 469)に掲載されています。

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