水星磁気圏探査機みお

[ISAS news] 従来とは違う「みお」の地上系システムと運用 (山下・中村)

2020年07月10日

ご存じの通り「みお」は日欧共同のプロジェクト「BepiColombo」の一部であるため、従来のISAS衛星とは運用方法が異なります。試験~打上後~水星到着後までフェーズ毎に地上系システムの構成(図参照)が変わります。

まずは、前半で試験から打上までの通信(テレメトリ/コマンド)について記述したいと思います。

日本での「みお」の地上試験は従来のISAS衛星と同じ様に進められましたが、従来との違いとして、フライトモデル総合試験に2年以上と長くかかりました。

その後、MPOとの結合試験の為、ESTEC(欧州宇宙技術研究センター)に地上系システムも輸送し試験に挑みました。地上システムをESTECに設置し、コマンドをESTECから打ち、テレメトリがESTECと日本に伝送されるかを確認します。ESTEC側の伝送試験は無事に終わり、日本にテレメトリを伝送するためISDNに繋ぎ伝送試験です。日本側と連絡をとりながらテレメトリが伝送されたのか確認するとISDNの電話回線は繋がっているのにテレメトリが伝送されないとのこと。持ち込んだ日本製のISDN装置がヨーロッパでは使用出来ないのか。急遽日本から海外でも使用できる装置の輸送をお願いしました。いつ届くのか、もし間に合わなければ別の手段に変更、それをいつ判断するのかと毎日ヒヤヒヤでした。やっと「みお」の試験1日前に届き装置を入替し試験実施、日本から「テレメトリが受信出来た」との声が聞けた時は、嬉しかったのを覚えています。その後は地上系としては試験も順調に進んだと思っています(古い機器が壊れ何回か輸送しましたが)。

打上げ日程が決まりCSG(Centre Spatial Guyanais)で、テレメトリ伝送試験を開始しましたが、日本側にまたテレメトリが伝送されない事態が発生。大急ぎで調査すると、使用したISDN回線ではデータ伝送不可であることが判明し、急遽別回線の伝送に切替え間に合わせました。海外とのデータ伝送は本当に大変だと実感しました。水星に到着するまで5年と長いので、機器を安全に維持していくのも今後の課題です。

では後半は打上からの運用編宜しくお願いします。

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2018年10月20日、CSGから「みお」が打上げられました。追跡管制隊員は、CSG、ESOC(欧州宇宙運用センター)、ISASの三拠点に分かれ衛星の状況を見守っていました。

私はISASにいて、「みお」のテレメトリを確認できるまでドキドキしたことをつい最近のように思い出します。

さて、打ち上げられた後もこれまでのISAS衛星とは違った形式で運用を行っています。

その一部をご紹介したいと思います。

● コマンド運用編
テレメトリやコマンドの授受はMPOを経由して行っているため、コマンド送信を行う場合にはMPOが解釈できる形式にして、運用の1- 2週間前にESOCの管制装置へ送っておく必要があります。そのため、コマンド送信はESA(欧州宇宙機関)の衛星管制運用者が実施し、プロジェクトメンバーは現地もしくはISASからリモートでサポートする形式をとっています。

● 運用場所編
ISAS衛星は基本的にB棟の2Fか3Fの管制室で運用しています。しかし、「みお」は前述の通りESOCを介して運用をしていることから「みお」運用室で行っています。「みお」が管制室で運用するのは約5年後の分離運用からの予定です。

● 運用頻度編
航行中のBepicolomboの運用は週1-2回の頻度で実施されています。その中でMMOが運用できる日はさらに限られています。

運用頻度が少ないためパスの最初にダウンリンクするテレメトリも多かったり、MPOに運用時間を譲渡しなければならなかったりと、「みお」の運用時間が逼迫してしまうなんてこともしばしば...。分離までの運用は、常に時間との闘いとも言えます。

このように運用方法が違う分、地上での運用準備作業も異なりますが、最近では作業もスムーズに実施でき、効率化も進めてきました。

滞りなく安定した衛星運用が進められるように、黒子のような立場として今後も「みお」のミッション成功に寄与できたらと思います。

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中央が地上系担当の山下さん、右端が筆者。左側の画面を通してリモートでESOCと連絡を取り合っています。

この記事は、ISASニュース 2020年6月号 (No. 471)に掲載されています。

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