水星磁気圏探査機みお

[ISAS news] ベピコロンボプロジェクト概要と歴史 (早川)

2019年05月29日

「BepiColombo(ベピコロンボ)国際水星探査計画」は日欧協力により、2機の周回軌道衛星を用いて水星の内部・表層・大気・磁気圏にわたる総合的観測を行い、水星の現在と過去を明らかにすることを目的とする、史上三番目かつ最大の水星探査計画である。水星は、地球型惑星のなかで最も解っていない惑星である。この惑星に関する知識は、限られた地上観測と1970年代に行われたMariner10の3回のフライバイ観測及び2011年から5年間にわたり周回軌道から観測したMESSENGERからのものであり、大きな謎を我々に投げかけている。

Mariner10のフライバイ観測により、水星の固有磁場の存在が明らかになった。この水星に磁場が存在することは全く予想外であった。惑星が固有磁場を持つには溶けた中心核が必要とされるが、小質量の水星でどのようにしてこれが可能となっているのかは発見から40年以上が経過した現在でもわかっていないだけでなくMESSENGERの観測によって、より謎は深まっている。この特異な惑星はその全貌の解明が、地球および太陽系の現在の姿・過去の歴史のより深い理解に直結するため、固体惑星・宇宙プラズマの双方の観点から興味深い対象である。しかしながら探査機を水星周回軌道に入れるためには膨大なエネルギーを必要とする(減速に必要なエネルギーを加速に使えば太陽の重力圏を飛び出していける)ため「行くことが困難」である。また、地球近傍と比べ太陽光のエネルギーは最大で11倍を超え、さらに水星表面からの反射光、熱輻射もあり、「生き延びることも困難」な環境である。

1990年代になり、技術的進展により周回衛星計画が現実味を帯び、日本でも1997年に水星探査ワーキンググループを結成し単独での探査を検討し、1998年11月に日本独自の水星探査計画の提案を行った。その後、同時期に水星探査「BepiColombo」を検討していたESA(欧州宇宙機関)から1999年11月に協力の打診があり、2000年9月からは日欧協力の元で検討が進められた。ESAでは計画全体がコーナーストーンミッションとして、日本では担当衛星の開発全体及びESA側の衛星へ搭載する科学観測機への日本側貢献分を合わせた衛星計画として採用され、共同で開発を実施することとなった。BepiColomboは日本と欧州の初の本格的な宇宙機共同プロジェクトであり、新たな協力関係を築く大きな一里塚となった。また、国際協力チームによる競争的な観測装置開発も初の実績で、国際的な大型ミッション参加への大きな足がかりともなった。

当初は2010年度打上げ、2014年度水星到着、周回機2機と着陸機1機による同時かつ多面的な観測が計画されていたが、着陸機開発にかかるコストが膨大なことと期待される寿命が2週間程度と短いことから2003年11月に周回機2機による探査とすることに変更された。開発中は何度も危機に見舞われたが、最大の危機は2008年であった。ESA側の基本設計審査を前にして重量・コストの大幅な超過が明らかとなり、開発終了までには更なる技術的困難が予想されることなどから、ESAとしてミッションをキャンセルするか継続するかを6月のSPC(Science Programme Committee:ESAの科学ミッションの最上位意思決定委員会)に諮ることとなった。投票の結果はキャンセルに賛成が9票、反対は7票であった。キャンセルには3分の2以上の賛成を要するため2票差でキャンセルは否決されたが、SPCの元にTracking Committeeが設置されプロジェクトの活動をモニターすることとなった。その後1年にわたりモニターが継続されTracking Committeeの報告に基づき2009年11月のSPCではミッションの継続に賛成16票、反対0票となり最大の危機を乗り切った。

その後も打上げ機会の延期が何度も行われたが、2018年10月20日(日本時間)に無事打ち上げられ、現在惑星間空間を順調に航行中である。水星周回軌道には2025年末に投入され、その後地球年にして1年の観測と1年間の延長観測が予定されている。

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京都で2005年10月に開催された第2回BepiColombo SWT(サイエンスの全体会合)の様子。

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ESA側プロジェクトマネージャ(左から3人目)、ペイロードマネージャ兼「みお」対応(右から3人目)、プロジェクトサイエンティスト(右端)と「みお」開発メンバー(極一部) 。筆者中央。2019年3月JAXA東京事務所にて

この記事は、ISASニュース 2019年5月号 (No. 458)に掲載されています。

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