[ISAS news] 「みお」のクルーズチェックアウト、あるいは定期健康診断 (関)
2019年07月25日
BepiColombo探査機は、昨年12月中旬に1回目のイオンエンジン連続運転を開始し、今年3月上旬に無事終了しました。イオンエンジン稼働中は探査機とのコンタクトを週1~2回に削減した省エネ運用でしたが、3月中旬以降は運用機会も増え各種チェックアウトを再開しています。 水星へ向かう7年間のうち大部分は、「みお(MMO)」本体は電源を入れず、必要最低限のヒータで温度を保ちながら過ごします。しかし、定期的な「健康診断」は必要です。BepiColomboでは6~8カ月おきに各探査機の搭載機器の状態をチェックする機会を設けています。これをクルーズチェックアウトと呼んでいます。
5月15日に「みお」の初めてのクルーズチェックアウトを実施しました。内容は搭載リチウムイオンバッテリの電圧確認、そして観測機器の簡単な動作確認です。バッテリは劣化を抑えるために低いSoC(State of Charge)で打ち上げています。自己放電が進みすぎないよう定期的に電圧をモニタし、低下していれば補充電を行う必要があります。過去の保管実績から、摂氏-10度以下の環境ではほとんどSoCに変化がないだろうと予想しており、今回はその通りの結果が得られました。今後2年、3年...と経過すると少しずつ放電が進むかもしれませんが、クルーズチェックアウトで変化をしっかりキャッチできるでしょう。ESAが担当するMPO、MTMは、太陽電池パネルのメンテナンスを中心にチェックアウトを行っていました。
クルーズチェックアウトは、「みお」プロジェクトメンバーにとっても運用の段取りや緊張感を思い出す意味でとても重要です。初期チェックアウトからまだ半年ですが、「あの時はどうやったかな?」と思い出さなければいけないこともすでに幾つかありました。今年の夏は「みお」観測機器の高圧チェックアウト、金星フライバイ観測に向けた準備運用も計画しています。準備を整え緊張感を維持して臨みたいと思います。
この記事は、ISASニュース 2019年7月号 (No. 460)に掲載されています。