水星磁気圏探査機みお

[ISAS news] 「みお」の高圧電源機器チェックアウト、順調に進行中! (松田)

2019年08月30日

BepiColombo探査機は、2018年12月から進められてきたイオンエンジンの連続運転を経て、水星に向けた航路を順調に航行しています。水星磁気圏探査機「みお」は、2019年6月24日から7月5日にかけて、搭載科学観測機器の高圧電源部のチェックアウトを実施しました。「みお」には11の科学観測機器が搭載されており、このうち7つのプラズマ粒子観測装置と、ナトリウム大気カメラに高圧電源が搭載されています。観測装置に入射してきたプラズマを正確に検出するためのMCP(Micro-channel Plate)は、機器により最大5 kV程度の高電圧を必要とします。他方で、衛星における高圧電源の使用は、衛星に深刻な影響を与える可能性がある放電事故のリスクと常に隣り合わせです。そのため、高圧部の設計や、衛星本体・機器の表面状態の管理には、開発段階から細心の注意を払ってきました。運用においても同様で、機器のステータスを注視しながら、長い時間をかけて、ゆっくり、ゆっくりと規定値まで昇圧していきます。

高圧電源の昇圧は、大変な緊張感が伴うオペレーションではありますが、観測機器にとっては、初めて観測可能状態となるため、胸が高ぶる瞬間でもあります。水星に向けて航行中の「みお」は、周囲をMOSIF(MMO Sunshield and Interface Structure)に囲まれているため、開口部に視野がある限られた観測器のみが自然現象を捕らえる可能性があります。今回の高圧電源機器チェックアウトでは、7つのプラズマ粒子観測装置すべてがトラブル無く昇圧を成功させ、自然現象の観測機会に恵まれたMEA(Mercury Electron Analyzer)では、惑星間空間を流れる太陽風の電子を捕らえることにも成功しました。現象が見えだしたときの観測機器チームは、流石はプロと言わんばかりの落ち着きを保ちながらも、観測データを表示する画面を食い入るように見つめていたのが印象的でした。7月末から8月初旬にかけては、ナトリウム大気カメラの高圧電源部チェックアウトを実施する予定です。

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ドイツ・ダルムシュタットの欧州宇宙運用センター(ESOC)における、水星磁気圏探査機「みお」高圧電源機器チェックアウトの様子。夏の装いでチェックアウトに挑むプロジェクトメンバーの、真剣な眼差しが光る。

この記事は、ISASニュース 2019年8月号 (No. 461)に掲載されています。

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