[ISAS news] 日欧の違い(高圧ガス関係) (志田)
2020年09月03日
今回は、「みお」の地上支援としての高圧ガス周りを紹介したいと思います。
「みお」搭載の推進薬(超高圧の窒素ガス)及び気密試験用の超高圧のヘリウムガス、観測機器のセンサが酸化するのを防止するためのガスパージ用高圧窒素ガスという3種類の高圧ガスを用いています。
- 日欧の法律の違い
高圧ガスは、国内では日本の法律、欧州では欧州の法律で規制されます。それぞれの制定経緯もあって、国内の法律に適合していてもそのまますぐ欧州に、とはいかなく、色々と苦労をしました。違いの端的な例として、日本では「圧力」のみの規制に対し、米国も含めて欧州では「圧力×容積」というエネルギーの量で規制されています。ESA担当の方といっしょに法律の詳細まで検討し、日本から持ち込む機器を我々が使用することを認めてもらいました。 - ボンベの口金の違い
高圧ガスとして、もっとも身近なのはガスボンベでしょう。これにも違いが有ります。中でも、もっとも困るのが接続先であるボンベの口金です。サイズやねじのピッチなどが異なれば絶対接続出来ません。しかも欧州域内でも、フランス、ドイツなど国ごとに口金が異なり、ボンベの調達先が重要になります。この辺り、ESAとは何年にも渡って調整して、もう大丈夫だろうと思いながらも試験前にオランダに行って、納入されたばかりのボンベと手持ちの口金を合わせると、噛み合わない事態に至りました(図参照)。超高圧ということで、ガスメーカーが別のガス種のボンベを転用したようで、ESAの担当者も把握しておらず、帰国して急ぎ対応する口金を製作し、試験にことなきを得ました。ガスパージ用の窒素ガスについても、口金に入れるパッキンに僅かな違いが有りましたが、これも同様に対処しました。
オランダではドイツ製でしたが、ギアナはフランス海外県なのでまた変わります。噛み合わないのでは、とドキドキしましたが、無事打上げまで運用できました。
他にも現地作業してみないと判らないことが多々有りましたが勉強になりました。
推進系担当 志田 真樹 (しだ まき)
この記事は、ISASニュース 2020年8月号 (No. 473)に掲載されています。