[ISAS news] アントノフ (小川)
2020年11月30日
2018年5月、MMO(「みお」)のオランダのヨーロッパ宇宙技術研究センター(ESTEC)から南米仏領ギアナの射場(CSG)への輸送に立ち会いました。熱制御系担当として「みお」が輸送中に所定の環境に維持されていることを確認し、必要に応じて対処するのが任務です。オランダのスキポール空港から南米仏領ギアナのカイエンヌ空港まではロシアのアントノフという超巨大輸送機で輸送されました。
アントノフは衛星の輸送によく使われている世界最大級の貨物機です。胴体前後に大きな貨物扉を持ち、2基のクレーンが貨物室に装備されていて、貨物の搬出入がスムーズにできます。貨物室の上、操縦室の後ろにクルーの個室と顧客のための座席スペースがあります。普通の旅客機と同じ座席ですが、「いいやつを選んで座ってくれ」と言われました。座席のところに窓はなく外の様子はわかりません。飛行中貨物室はある程度与圧され空調されていますが、人が耐えられる気圧・温度ではなく飛行中のチェックはできません。地上でだけ衛星コンテナにアクセスできました。
ESAの電気推進モジュール(MTM)と混載でしたので、ESAから1名と衛星試験を請け負っているTAS-I社から3名が、私の他に搭乗しました。途中サンタ・マリア島に給油と時間調整のために寄港しました。衛星コンテナと積荷の健全性を確認後、ESAとTAS-Iの人たちと連れ立って空港の外のお店に行き、軽い食事をとりました。お店には卓球台やビリヤード台などがあり、彼らと一緒に遊んだのは良い思い出です。アントノフに戻り、衛星コンテナの健全性確認後、カイエンヌ空港に向けて出発しました。
アントノフも南米ギアナも初体験でとても心配しましたが、結果として問題なく輸送できてほっとしました。
...今回で一旦連載は中断になります。まだまだお伝えしたいことがたくさんあります。しばらくしたら再開したいと思います。どうぞご期待ください!
BepiColombo計画 日本側プロジェクトマネージャ 小川 博之(おがわ ひろゆき)
この記事は、ISASニュース 2020年10月号 (No. 475)に掲載されています。