[ISAS news] 「ベピコロンボ」ついに水星へ接近 ~1回目の水星スイングバイを実施~ (村上)
2021年11月26日
日欧共同水星探査計画「ベピコロンボ」の水星磁気圏探査機「みお」および水星表面探査機(Mercury Planetary Orbiter: MPO)は、2021年10月2日に打ち上げ来初めてとなる水星スイングバイを実施しました。探査機は同日の8時34分42秒(日本時間)に最接近高度199 kmを通過し、その後も目標通りの軌道を航行していることを確認しました。本ミッションでは打上げから水星周回軌道投入までの間に合計9回のスイングバイが計画されており、今回はそのうちの4回目となります。残り5回の水星スイングバイを経て探査機の軌道速度を水星に近づけ、2025年12月に重力捕捉での水星周回軌道投入を予定しています。
水星の昼側表面温度は約430度と高温であり、太陽光シールドに覆われている「みお」もスイングバイ時には水星表面からの強い熱輻射を受けることになります。その結果、探査機の側面に位置する太陽光パネルの温度が20分間で80度以上も上昇しましたが、探査機内部は厳重に断熱されており2~3度程度の上昇に収まりました。想定内の変化に、熱設計を担当した小川博之プロジェクトマネージャの顔にも安堵の色が伺えました。
今回のスイングバイでは、最終目的地である水星に初めて近づいたというだけでなく、水星の南半球において高度199 kmまで接近しており、マリナー10号およびメッセンジャーという過去の水星探査機でも未踏の領域を探査することに成功しています(図)。これまでのスイングバイ同様に「みお」に搭載されるほぼ全ての観測装置を稼働させ、水星磁気圏や周辺宇宙環境の科学観測を実施しました。特に水星における低エネルギー電子とイオンの同時観測は史上初であり、貴重な観測データとなります。観測は順調に実施され、観測データは各装置チームを中心に鋭意解析中です。今後の観測成果報告にご期待下さい。
また今回はスイングバイの前日に前夜祭オンラインイベントを開催し、プロジェクトメンバーのほか藤本正樹副所長や尾崎直哉特任助教、またフランス宇宙物理・惑星学研究所の相澤紗絵さんらを交えたトークを配信しました。さらにスイングバイ前後には探査機の位置を示す仮想画面をライブ配信し、視聴者とともにスイングバイの瞬間を迎えました。ともに多くの応援コメントを頂き、運用チームの心の支えとなりました。
2回目の水星スイングバイは2022年6月23日に予定されています。運用チームも科学チームもまだまだ気を抜けない日々が続きます。水星への旅路を続ける「ベピコロンボ」の今後に引き続きご注目下さい。