水星磁気圏探査機みお

[ISAS news] 「ベピコロンボ」2回目の金星スイングバイに成功、いざ水星へ (村上)

2021年09月17日

日欧共同水星探査計画「ベピコロンボ」の水星磁気圏探査機「みお」および水星表面探査機(Mercury Planetary Orbiter: MPO)は、2021年8月10日に2回目となる金星スイングバイを実施しました。探査機は同日の22時51分54秒(日本時間)に最接近高度552 kmを通過し、金星の重力を利用して毎秒5.7 kmの減速を行って目標通りの軌道に投入することに成功しました。これにより探査機はいよいよ水星に向けて舵を切ったことになります。残り6回の水星スイングバイを経て、2025年12月に水星周回軌道へ投入予定です。

今回のスイングバイでは1回目の最接近(高度10,722 km)に比べ、はるかに金星の近くを通過しました。そのため、通過時には太陽光シールドに覆われている「みお」も金星大気からの強い太陽反射光に照らされ、探査機の側面に位置する太陽光パネルの温度が5分間で約110度も上昇しました。想定内の変化だったとはいえ、運用室のディスプレイに映し出された温度グラフの急峻な変化に運用チーム一同声を上げたとともに、まさに金星の間近を通過したことを実感した瞬間でした。

1回目に引き続き今回も「みお」に搭載されるほぼ全ての観測装置を稼働させ、金星電離圏や周辺宇宙環境の科学観測を実施しました。特に太陽直下点付近のプラズマ観測は過去にもほとんど例がないため、重要な金星観測の機会となります。観測は順調に実施され、金星周辺のプラズマ粒子および磁場の観測に成功しました。観測データは各チームを中心に鋭意解析中です。

金星スイングバイ中の「みお」の運用は全て事前に探査機に登録したシーケンスに沿って実施し、「みお」運用チームは相模原の運用室から探査機の状態を監視しました(図)。また観測機器チームもリモートで運用に参加し、取れたてほやほやの観測データをわれわれに共有してくれました。やはり探査機から送られてくる観測データを目にする瞬間の感覚は格別です。

次はいよいよ1回目の水星スイングバイが早くも2021年10月2日(日本時間)に迫ってきています。高度約200 kmを通過予定で、探査機搭載のモニタカメラから送られてくる水星表面の大迫力画像や、待ちに待った水星の科学観測データを目にする瞬間が待ち遠しいです。水星への旅路を続ける「ベピコロンボ」からますます目が離せません。

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図:2回目の金星スイングバイにおいて探査機を見守った「みお」運用チーム

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