水星磁気圏探査機みお

[ISAS news] 「みお」運用シミュレータと運用訓練、始動 (関)

2023年03月27日

BepiColomboは2022 年10 月に打上げ4 周年を迎え5 年目に突入しました。長いと思っていたクルーズ期間も折り返し地点をすぎ、プロジェクトでは水星到着に向けた準備にとりかかっています。

2021- 22 年度にかけて宇宙研の一室に「みお」運用シミュレータを構築しました。探査機のメインコンピュータ(DMC, data management controller)のエンジニアリングモデル、姿勢系ダイナミクスシミュレータ、一部観測機器の地上試験モデルを組み合わせた構成になっています。探査機の全機能の模擬には至りませんが、手順の検証や運用訓練に利用できるような環境になっています。


2023 年1- 3 月にかけて、運用シミュレータを用いた1回目のクリティカル運用訓練を実施しました。「みお」のクリティカル運用は、水星周回軌道での探査機分離からワイヤアンテナ・磁力計マストの伸展完了までをカバーしています。毎週1- 2 回、合計14 回に渡り本番同様にコマンドを送信しながら(距離に応じた伝搬遅延の模擬も可能!)訓練を行っています。本稿執筆時点であと2 回残っていますが、今回の主目的であったシミュレータの操作習得・管制システムや運用支援ツールの操作習得・ノミナル(正常)手順の理解と課題抽出は達成できたと思います。運用の全体像を把握できたことで、検討&調査すべき事項が多く洗い出されました。これらを反映し夏ごろに第2 回の訓練を行う計画です。

ところで、今頃訓練を?と思われるかもしれません。通常は打上げ前に必要な訓練は終わらせておくものですよね。「みお」の場合、上記の運用は打上げから7 年後になることが分かっていたため、当初から打上げ後の適切な時期にシミュレータ整備と訓練を実施する計画になっていました。開発担当者と運用担当者が異なる場合の引継ぎの場としても訓練は適しています。


クルーズ中はMPO、MTMと結合された状態のため、「みお」 自身の姿勢制御機能や通信機能は水星周回軌道で分離されてから初めて使うことになります。これがほかの深宇宙探査機にない、「みお」特有の難しさです。今回の訓練はノミナルケースのみでしたが、これから様々な異常ケースも想定して訓練を行っていきます。気が遠くなりますが、確実に準備を進めていきたいと思います。続報をお楽しみに!

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図 訓練の朝会の様子。JAXA、探査機システムメーカー、運用支援メンバーが集まり、その日の運用内容を確認する。

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